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アルムナイ制度とは?
アムナイルとは「卒業生、同窓生」を意味する言葉です。企業の分野では元社員・退職者にあたる人材のことを指します。アルムナイ制度とは、退職者と継続的に関係を築き、アルムナイを自社に再雇用する制度のことを指します。
アルムナイ制度は、自社での経験と社外での経験をもつ優秀な人材を獲得できる制度です。欧米企業を中心に導入されている制度ですが、終身雇用の崩壊や採用難などの背景から、優秀な人材を確保するための手法として日本でも注目されています。
アルムナイ制度のメリットは?
ここでは、アルムナイ制度のメリットを解説します。
採用や教育のコストを削減できる
採用活動でナビサイトや人材紹介会社の利用は費用がかかってしまいます。アルムナイ制度は元社員に直接アプローチして採用活動ができるので、サービス利用料などの費用がかかりません。加えて、通常の応募者と比べて、アルムナイは人となりを事前に把握できているので人材を探す手間や面接などの工数の削減にもつながります。
また、元社員なので自社の事業や業務にも理解があり、1から教育する必要がないので教育コストを削減できます。
自社をよく理解した人材を獲得できる
アルムナイ制度では元社員を採用するため、自社をよく理解した人材を獲得できます。自社への理解があると、自社で働くイメージがしやすくミスマッチがおこりにくいです。
また、事業や業務への理解もあるので、仕事に慣れやすく早期の戦力化が期待できます。
社内に新しい知見や手法が入ってくる
アルムナイ制度の採用によって、社外から自社にはない知見や手法が入ってきます。このような新しい情報を社内で共有すれば、人材のレベルがより一層高まっていくでしょう。
顧客や事業パートナーとして関係が続く
アルムナイ制度のメリットは採用だけではありません。退職者と良好な関係を築いておくことで、退職者と顧客や事業のパートナーとして関われます。元社員と元雇用主の関係があるので、信頼できるパートナーとして仕事ができるでしょう。
アルムナイ制度を導入するデメリットは?
ここでは、アルムナイ制度を導入するデメリットを解説します。
人事や給与の制度を見直す必要がある
アルムナイ制度を導入すると、人事や給与の制度を見直す必要がでてきます。アルムナイは自社での経験と他社での経験があり、よい待遇を受けることも多いでしょう。しかし、アルムナイの待遇が、自社を辞めずに働いていた社員からすると不満に感じる場合もあります。逆に待遇が悪いとそもそも再雇用が難しくなります。
そのため、アルムナイと既存の社員が互いに不満を感じない制度であるか見直す必要があります。
社員の退職へのハードルが下がる
アルムナイ制度を導入すると、「退職してもしても戻れるから大丈夫」と社員が感じ退職へのハードルが下がる可能性があります。
退職へのハードルが下がると、優秀な人材の流出や社員のモチベーションの低下につながってしまいます。
アルムナイが社員からよく思われない可能性がある
アルムナイ社員は一度自社を辞めた人材であり、既存社員から会社を裏切った人と思われてしまい会社にうまく馴染めない可能性もあります。
退職は次のステップへの挑戦で会社を裏切る行為ではないことや、アルムナイ制度の周知を図り、アルムナイ社員を煙たがらない風土を作っていくのが大切です。
アルムナイ制度導入のポイントは?
ここでは、アルムナイ制度を導入する際のポイントを解説します。
再雇用の条件を定める
アルムナイ制度のために再雇用の具体的な条件を定めるのが大切です。誰でも復職できると感じられてしまうと退職へのハードルが下がり、人材の流出やモチベーションの低下などのデメリットが発生します。
そのため、スキルや経験など具体的な再雇用の条件を定め、退職へのハードルが下がりすぎないようにしましょう。
アルムナイと良好な関係を築いておく
アルムナイ制度導入のためにはアルムナイと良好な関係を築いておくのもポイントです。強く引き止めたりせず快く送り出すなど、退職前に自社によいイメージを持ったまま退職してもらえるようにしましょう。
また、退職者と定期的に交流の機会を設けるなど、関係を保持できる取り組みをおこなうのがおすすめです。
社内の受け入れ体制を整える
社内の受け入れ体制を整えるのも重要なポイントです。アルムナイ制度を導入しても、受け入れ体制が社内になく、再雇用をよく思わないメンバーがいるとのびのびと働けず、アルムナイ制度で優秀な社員を雇用する効果がなくなってしまいます。
そのため、社内でアルムナイ制度の共有や既存社員との面談などの取り組みで、社内の受け入れ体制を整える必要があります。
アルムナイ制度の実施方法は?
ここでは、アルムナイ制度の実施方法を解説します。
1.アルムナイとつながりを作る
アルムナイ制度を実施するには、退職後に関係がなくならないように、アルムナイとつながりを作る必要があります。Facebookのグループ機能やアルムナイ専門のサービスを活用し、アルムナイとつながれるネットワークを作りましょう。
2.アルムナイと交流する機会を設ける
アルムナイとつながりを作ったあとは、アルムナイと交流する機会を設けましょう。勉強会や飲み会などの交流会を開催すれば、アルムナイとの関係を深め、自社とアルムナイの情報交換をおこなえます。互いの状況を把握しておけば、再雇用や業務委託などのアルムナイ制度の活用につながっていきます。
3.再雇用したいアルムナイに採用活動をする
人材を採用したいポジションに当てはまる、再雇用したいアルムナイがいた場合、アルムナイに声をかけ採用活動をおこないましょう。アルムナイとの交流をおこない関係を築いておけば、通常の採用より容易に優秀な人材を確保できます。
アルムナイ制度の導入企業事例を紹介!
ここでは、アルムナイ制度の導入企業事例を紹介します。
アクセンチュア株式会社

外資系ITコンサルタント企業であるアクセンチュアは、「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」というアルムナイ制度を導入しています。世界中のアクセンチュアのアルムナイをつないでおり、その数は30万人に登ります。
再雇用だけが目的ではなく、アルムナイ同士のつながりを大切にしており、アルムナイが交流するイベントも多く開催されています。実際にアルムナイネットワークで出会った人と仕事をしている人や、制度がきっかけで復職する社員も多く、アルムナイ制度がうまく機能しているといえます。
ヤフー株式会社

さまざまなインターネットサービスを展開するヤフーでは、「モトヤフ」という退職者のコミュニティを運営しています。Facebookのコミュニティやオープンスペースでの交流を通してつながりをつくっています。モトヤフがきっかけで再雇用にもつながっており、復職する社員も多いそうです。
また、既存社員とアルムナイの交流が活発なのも特徴で、ヤフー社内と社外の両方の経験があるアルムナイとの交流でイノベーションを促進しています。モトヤフは優秀な人材の採用に役立つのはもちろん、社員にもよい影響を与える取り組みであるといえます。
サイボウズ株式会社

ソフトウェアの開発・提供をおこなうサイボウズでは、「Cybozu Meetup」というサイボウズのエンジニアと交流できるイベントを開催しています。サイボウズを退社したエンジニアを対象にしたイベントもおこなっており、アルムナイとの交流も積極的におこなわれています。
また、「育自分休暇制度」という自分の成長のための転職や留学で退職した場合、最長6年間はサイボウズへ復職できる制度があります。サイボウズに戻れる安心感があるので社員が挑戦しやすくなる制度であるといえます。サイボウズとしても、社外に出てスキルや経験を積んだ優秀な人材を確保できるメリットがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?アルムナイ制度について解説しました。アルムナイは社内と社外の経験を積んでおり、貴重な人材です。アルムナイと関係を築いておけば採用難の時代でも優秀な人材を獲得できます。ぜひ一度アルムナイ制度について検討してみてください。