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アサーションとは?
アサーション(assertion)とは、「自己主張」という意味の単語で、自分の考えや気持ちを、率直かつ場に適した方法で伝えるためのコミュニケーションスキルです。アサーティブ、アサーティブネスも同じような意味で使われます。
アサーションはもともと、1950年頃に社会に適応するための行動療法としてアメリカで提唱されたものです。その後1970年代に黒人や女性の人権運動において、適切な自己主張のための手段として発展しました。自分の意見をうまく伝えるスキルのアサーションは、交渉のためのスキルとしても注目されるようになりました。現在では、企業や医療、教育など幅広い分野で活用されています。
職場でのアサーションの重要性
職場では上司や部下、取引先などさまざまな立場の人とコミュニケーションをとり、相手と円満な関係をきずく必要があります。相手を尊重せず自分の主張を押し付けたり、乱暴な言葉を使ってしまうと円満な関係は築けません。一方で、相手ばかりを尊重し自己主張をしないと、無理難題を引き受けてしまったり、必要なときに指摘ができません。仕事にストレスを感じる要因にもなります。
アサーションを身につけると、自分と相手の主張を互いに受け入れ、円満な関係をきずけます。そのため、職場でアサーションはとても重要なスキルです。
アサーションの4つのポイント
アサーションを実践するために大切な4つのポイントを紹介します。
1.誠実
1つ目のポイントは、自分自身に誠実になることです。自分の要求を抑え、相手の要求ばかりに答えるのはアサーションではありません。自分に嘘をつかず相手に正直に伝える必要があります。
2.率直
2つ目のポイントは、率直であることです。遠回しの表現をすると真意が相手に伝わらず、自分の意見を主張できたとはいえません。相手に伝わる言葉で率直に表現するのが大事です。
3.対等
3つ目のポイントは、相手と対等に向き合うことです。部下だからといい偉そうな態度を取らず、上司だからといって自分を卑下せず、
4.自己責任
4つ目のポイントは、自己責任という考えを持つことです。自分の主張をした責任、しなかった責任は自分がひきうけると考えます。自己責任の考え方があれば、安易に相手のせいにしなくなり、相手を尊重した立ち振舞につながるのです。
アサーションのメリットは?
ここではアサーションコミュニケーションのメリットを紹介します。
対等な意見交換ができる
職場内や取引先などさまざまな立場の人と関わり、円滑なコミュニケーションをとる必要があります。違う立場の人と関わるのに抵抗のある人もいるでしょう。アサーションを身につければ、適切な自己主張ができるようになり、違う立場の人とも対等に意見を交わせるようになります。
心理的安全性が高まる
心理的安全性は「チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー 間で共有された状態」を指します。効果的なチームをつくるために必要です。アサーションを身に着けメンバーが自己主張をしあえる環境になれば、心理的安全性も高まっていきます。
心理的安全性について詳しくは以下の記事を御覧ください。
心理的安全性とは? 心理的安全性は、1999年にハーバード大学のエドモンドソン教授が提唱した概念です。心理的安全性とは、…
自己表現の3つのタイプ
自己表現には「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」「アサーティブ」の3つのタイプがあります。アサーションではアサーティブタイプが理想とされています。自分のタイプを把握し、アサーティブタイプを目指しましょう。ここでは部下から新事業の提案を受けた場合の例を挙げながら、自己表現の3つのタイプを紹介します。
1.アグレッシブタイプ
アグレッシブタイプは攻撃的な自己表現をおこなうタイプです。相手よりも自分を尊重し、相手の意見を軽視してしまいます。率直さはありますが、自分の意見を強く押し通そうとする傾向があります。
例「これはない、却下。」
2.ノンアサーティブタイプ
ノンアサーティブタイプは積極的な自己表現をおこなわないタイプです。自分よりも相手を尊重し、いいたいことがあっても自分の考えを伝えるのを遠慮してしまいます。
例「まあ、いいんじゃない」
3.アサーティブタイプ
アサーティブタイプは、自己主張を適切におこないながらも相手を尊重できるタイプです。アサーションで理想とされるものでもあります。自他共に尊重することで適切なコミュニケーションをとれます。
例「ここがとてもいい!でもこっちはもう少し改善できると思う。」
アサーションのトレーニング方法は?
アサーショントレーニングは、アサーティブタイプを目指すトレーニングです。ここでは有効な方法を紹介します。
DESC法(デスク法)
DESC法とは、「Describe(描写する)」「Explain(説明する)」「Specify(提案する)」「Choose(選択する)」の頭文字を取ったものです。主張する際はこの4つの要素を分析し伝えると、相手に伝わりやすいアサーションコミュニケーションができます。
上司から仕事を頼まれたが断らなければならないシチュエーションの発現例を挙げながら説明します。
・Describe(描写する)
まず、客観的な事実を述べます。ここでは特にポイントの「率直」が重要になります。主観や推測で遠回しな表現をしてしまうと、相手に状況が正確に伝わりません。
例「他の仕事があるため、すぐには対応できません。」
・Explain(説明する)
事実に加え自分の意見や気持ちを伝えます。「誠実」「率直」の2つのポイントが重要になります。自分の気持ちを正直に伝えましょう。
例「申し訳ないですが、今引き受けるとスケジュール的にも困ってしまいます。」
・Specify(提案する)
次に解決策や代替案を提案します。あくまで提案で強制させないのがポイントとして挙げられます。
例「明日以降でしたら引き受けれますがどうでしょうか。」
・Choose(選択する)
最後に提案に対する相手の反応に合わせて、自分の行動を選択します。Yesの場合とNoの場合どちらも想定しておきましょう。
例「緊急性がないようでしたら、明日から取り組みます。」「急ぎでしたら、他の者を探します。」
アイメッセージ
アイメッセージとは主語を「私」にして話すことです。主語を「あなた」にしてしまうと相手の話から始まるので、非難につながってしまうでしょう。「私」から話を始めると自分の気持ちを伝えながら、相手を感情的に非難することを避けれます。
アイメッセージで相手の非難を避け、自分の気持を伝えるトレーニングをおこなえば、アサーションで大事なポイントの「誠実」を磨けます。
一方でアイメッセージだと、遠回しな言い方になってしまい、ポイントの「率直」が欠けてしまう場合があります。直接伝える必要があるものとのバランスをとるのが大切です。
ロールプレイング
ロールプレイングは役割を設定しておこなうトレーニングです。上司と部下を決め、上司から頼まれた仕事を断るなどのシュチュエーションでおこなわれます。アグレッシブな言い方とアサーティブな言い方両方でおこなうと、アサーションの重要性を実感できます。最後に振り返りをして、どのように発言すれば自分の気持が伝わるのか、相手を不快にさせないか学べます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?アサーションについて解説しました。4つのポイントを意識し、アサーションを身につければ円滑なコミュニケーションをおこなえます。自分の意見を伝えるのに抵抗がある人や、強く自分の意見を押し付けてしまう人は、ぜひアサーショントレーニングをおこなってみてください。