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心理的安全性とは?
心理的安全性は、1999年にハーバード大学のエドモンドソン教授が提唱した概念です。心理的安全性とは、「チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー 間で共有された状態」を示します。
引用:Amy Edmondson (1999) Administrative Science Quarterly. Vol. 44, No. 2
例えば、上司への進言を安心しておこなえる環境であれば、心理的安全性は高いといえます。Googleが2015年に、心理的安全性は効果的なチームを構成するうえで必要な要素であると、調査結果を発表し企業で重視されるようになりました。
また、コロナ禍でリモートワークが普及し、従業員同士の交流が課題となっています。文面のみの表情が見えないやり取りが増え、不安を感じる人も多いです。不安をなくし、生産性を上げていくためにも心理的安全性は重要な要素です。
心理的安全性は「ぬるま湯」ではない
心理的安全性と聞くとメンバーの仲がよい状態と考える人が多いです。しかし、仲がよければ心理的安全性が高いわけではありません。心理的安全性ではリスクをとれるかが重要な指標です。ただメンバーの仲がよいだけだと、関係を乱さないように気を使いリスクをとれなくなってしまいます。こうなると、気を使い合い大切な指摘ができない「ぬるま湯」につかったチームになってしまいます。
心理的安全性を高める取り組みをする際はメンバー間で、ただ仲良くなるための取り組みではなく、意見を言い合うための取り組みであると周知を徹底する必要があります。
心理的安全性が低いと生まれる4つの不安
エドモンドソン教授は、心理的安全性が低いと4つの不安が生まれ、行動に悪影響を与えるとしています。ここでは4つの不安について解説します。
無知だと思われる不安
1つ目の不安は「こんなことも知らないのか」と無知だと思われる不安です。不明点が出てきても、メンバーへの相談を控えてしまいます。悩みを解消できないまま業務を進めてしまい、ミスにつながってしまうでしょう。
無能だと思われる不安
2つ目の不安は「こんなこともできないのか」と無能だと思われる不安です。この不安があるとミスを隠そうとしたり、自分のミスを認めなくなります。
邪魔をしていると思われる不安
3つ目の不安は、「あの人の発言のせいで、会議が長引いている」と邪魔をしていると思われる不安です。会議などで積極的な発言ができなくなってしまい、議論が滞ってしてしまいます。自分の考えを発信できなくなり、アイデアやイノベーションが生まれなくなるのもデメリットです。
ネガティブだと思われる不安
4つ目の不安は「いつも否定的な発言をしている」とネガティブだと思われる不安です。業務の指摘しなければならない点やデメリットに言及できなくなってしまい、業務の効率化や改善が見られなくなるでしょう。
心理的安全性が高いメリットは?
ここでは心理的安全性が高いことで発生するメリットを紹介します。
生産性の向上
心理的安全性が高いと、生産性が向上します。従業員のエンゲージメント向上や、行動に対する不安の減少でより活発な生産活動が見られるようになります。
イノベーションの促進
心理的安全性が高いとイノベーションの促進が期待できるのもメリットです。心理的安全性が高いことでコミュニケーションが活発化し、今まではでてこなかった意見が出てくるようになるでしょう
離職率の低下
離職率の低下もメリットです。心理的安全性が高いのは職場で働く不安が少ないということです。従業員がのびのびと働けている環境なので、離職率低下が期待できます。

上記の画像はFringe81株式会社がおこなった仕事と心理的安全性に関する調査の結果です。職場で働き続けたいかという質問と、心理的安全性の度合いを示すPSJスコアの相関をグラフにしたものです。「当てはまらない」「どちらかと言うと当てはまらない」と答えた人はPSJスコアも低いことがわかります。特に助け合いに関する項目では大きな差が出ています。この結果から心理的安全性を高めれば離職防止に役立つことがわかります。
心理的安全性を測定する7つの質問
心理的安全性は目に見えるものではありません。心理的安全性を測定するために、有効とされている測定方法がエドモンドソン教授が提唱している7つの質問です。
・チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる
・チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある
・チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある
・チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい
・チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない
・現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる
以上の7つです。これらの質問に対してポジティブな答えが多ければ心理的安全性は高いといえます。また、ネガティブな答えがどこに多いかを調べることで、心理的安全性を低下させている要因がわかります。
心理的安全性の作り方4選!
ここでは心理的安全性の作り方を紹介します。
1.日頃からコミュニケーションをとる意識を持つ
心理的安全性を高めるうえでコミュニケーションをとるのは重要です。普段から会話がないのに、急に意見をだしてと言われても困惑してしまいます。日頃からコミュニケーションをとっておけば、発言へのハードルが下がり、積極的な発言につながります。仕事の話だけでなく、生活の話をするのも大切です。
2.平等な発言の機会を与える
特定の人にのみ意見を求めると、聞かれてない人は自分は無能と思われているのではないかと不安が生まれます。そのため平等に話を聞く必要があります。自分の意見が期待されていると感じ、
3.否定しない
勇気を出して発言してくれた意見を否定してしまうと、メンバーが次の発言に気後れするようになってしまいます。もちろん実際に発言の内容が的を得ていない場合もあると思います。その場合は、話を全部聞いたうえで、いいところを褒め、発言してくれたことに感謝しましょう。否定する際も理由をしっかり説明するのがいいです。とにかく頭ごなしに否定しないのが大切です。
4.1on1ミーティングをおこなう
上司と部下の1on1ミーティングも心理的安全性を高めるのに有効です。1対1であれば複数人のミーティングよりも個人的な話ができ、部下との距離を縮めれます。普段から意見を交わしておけば、発言しやすくなります。また、上司も部下について知れるので、マネジメントにいかせます。
心理的安全性を高める企業の取組事例
ここでは、実際に企業がどのような取り組みをおこなっているのか紹介します。
Google「ピアボーナス」
Googleではピアボーナスを導入しています。ピアボーナスとは、従業員が自分以外の従業員に対してボーナスを送るという取り組みです。Googleでは一人16000円程度のお金を他のチームのメンバーに送ることができます。ボーナスを送る際に、理由を書いて贈るのがポイントです。互いの仕事を認め合い、安心感を大きくし心理的安全性を高めているのです。また、ピアボーナスは、単純に報酬がもらえる制度なので従業員のモチベーション向上にも寄与しています。
メルカリ「mertip (メルチップ)」
メルカリでも独自のピアボーナス制度である、メルチップを導入しています。社内コミュニケーションツールSlackからリアルタイムで気軽に贈り合えるのが特徴です。日々の感謝にボーナスを添付するだけでなく、コミュニケーションのきっかけとしてボーナスを贈ることもあるそうです。
社内からは「相互に御礼をカジュアルに言いやすい環境になった。」という声もあり、心理的安全性の向上に貢献していることがわかります。
引用:mercan「贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。」
まとめ
いかがでしたでしょうか?心理的安全性について紹介しました。心理的安全性を高めれば、生産性の向上やイノベーションの促進などのメリットがあります。心理的安全性は制度だけでなく、日々の意識からも高めていけます。発言に抵抗があると感じている方や、メンバーの発言量が少ないと感じる方は、職場の心理的安全性について考えてみてください。