目次
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とはわかりやすく説明すると仕事に対して社員を割り当てる雇用形式のことです。職務記述書(ジョブディスクリプション)によって、職務、労働時間、報酬などを細かく設定した上で雇用契約を結びます。学歴や年齢に関係なく、個人のスキル、成果に重点を置いた形式です。
海外では主流の形式ですが、日本でも注目されており導入企業が増えています。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは?
ジョブ型雇用と比較される雇用形式にメンバーシップ雇用があります。メンバーシップ雇用は「人員に対して職務を割り当てる」形式です。日本で主流の形式です。新卒一括採用をおこない、終身雇用や年功序列を前提として雇用します。入社時点で職務は定められておらず、研修などを通して職務が割り当てられていきます。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いをまとめました。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 | |
仕事内容 | 明確に定められており限定的 | 明確に定められおらず総合的 |
報酬 | スキル、成果によって評価される | 役職や年齢によって決まる |
キャリア | 異動や転勤はない | 異動や転勤がある |
必要なスキル | 専門性の高いスキル | 幅広い分野の知識、スキルが必要 |
教育 | 自らおこなう | 会社による研修 |
ジョブ型雇用が広まっている背景
ここでは、ジョブ型雇用が日本で広がりを見せている背景を紹介します。
経団連による働きかけ
中西会長を中心に経団連ではジョブ型雇用の導入を提案しています。2021年1月に経団連が開いた労使フォーラムにおいても「従来の画一的な日本型雇用慣行の限界が顕在化している」とのコメントがありました。
ジョブ型雇用を導入し、労働市場の流動性が上がれば、給与水準が上がるといわれています。
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専門性の高い分野の人材を確保するため
IT化によって専門性の高い職務が増加しています。もともとはIT関連など一部の企業でしか必要なかったスキルも、あらゆる企業で求められるようになりました。ジョブ型雇用をおこなえば、専門性の高い業務をこなせるスキルを持った人材を確保しやすくなります。
テレワークの普及
新型コロナウイルスの影響もありテレワークが普及しています。テレワークによって従来の勤務態度といった評価基準の利用が難しくなりました。そのため、成果で評価するジョブ型雇用への注目が集まりました。
また、業績が下がった企業も多く生産性を上げたい企業も増えています。従業員の仕事への積極性の上昇が期待できることも、ジョブ型雇用への注目が集まった要因です。
ジョブ型雇用を導入するメリットは?
ここでは、ジョブ型雇用を導入するメリットを紹介します。
ミスマッチを防止できる
ジョブ型雇用では職務記述書によって細かく条件が指定された上で、雇用契約を結びます。そのため入社後に、仕事に対する不満がでづらく、ミスマッチを防止できます。
プロフェッショナルな人材を採用できる
ITエンジニアなど専門性の高い人材を欲する企業は多数あります。専門的な業務をおこないたいときに、プロフェッショナルな人材は必要不可欠です。ジョブ型雇用であれば、職務に対して必要な専門性の高い人材を雇用できます。
評価基準がわかりやすい
成果に対して報酬を支払うので評価基準がわかりやすいです。メンバーシップ型雇用では上司との関係など不明瞭な評価基準も存在し、従業員に不信感を与えます。ジョブ型雇用であれば明確な評価基準で従業員からの不満もでにくいと考えられます。
ジョブ型雇用を導入するデメリットは?
ここでは、ジョブ型雇用を導入するデメリットを解説します。
従来の日本の雇用形式に合っていない
日本では新卒一括採用、年功序列型賃金、終身雇用などの日本式のメンバーシップ型雇用が一般的です。ジョブ型雇用とは真逆です。メンバーシップ型雇用では会社に勤務さえしていれば給料が上がるのに対し、ジョブ型雇用ではスキルと成果が求め続けられます。社員にとってはプレッシャーのかかる環境となるので不満が出てくることもあるでしょう。
急な導入をするのではなく、従業員に対して理解を促す取り組みをすることが大切です。
企業文化や組織風土を育てにくい
ジョブ型雇用を導入すると人材の流動性が高くなります。時間をかけることで生まれていた文化や風土、チームワークが育ちにくくなります。ジョブ型は職務の線引が明確であるとはいえ、組織としてチームワークを発揮しながら活動することは、とても重要です。
人の入れ替わりが激しい中でも短期間でチームを作り上げるマネジメントをしていく必要があるでしょう。
ジョブ型雇用を導入した企業事例を紹介!
ここでは、ジョブ型雇用を導入した企業を紹介します。
日立グループ

日立グループは電気機器を中心にITや鉄道などさまざまな領域で国際的に活躍している企業です。ジョブ型雇用を推し進めた背景は、グローバル化に対応するため統一された人事制度が必要になったことです。時差などで世界中の社員を一括に管理することは難しいですが、場所、時間問わずに対応することのできるジョブ型雇用を導入することでグローバル化に対応しています。
ジョブに対する採用活動に加え、2020年からジョブ型雇用を一層強化しています。一部のジョブを対象に学歴別に設定された初任給ではなく、本人の能力などを加味した個別の処遇形態をとることを可能にしました。また、全社でのジョブ型雇用も目指しています。日立グループで作成された職務記述書は300種類を超えるそうです。
富士通株式会社

富士通は通信システムや、電子デバイスの製造販売などをおこなっている総合ITベンダーです。1990年代に一度、成果主義の人事制度を導入しましたが失敗に終わりました。そして、近年改めてジョブ型雇用の人事制度の導入を始めました。
2020年に幹部への改革を実施しました。世界中に点在する幹部を、成果に応じてレベル分けし、レベルに応じた給料が支払う制度を導入しています。富士通も全社員を対象に、ジョブ型雇用を推進しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか、ジョブ型雇用について紹介しました。日本型の雇用が限界を迎えているといわれるなかで、雇用制度の見直しが必要になっています。ぜひ一度、ジョブ型雇用を検討してみてください。