目次
採用基準とは?
採用基準とは自社に合った人材を見極めるための指標であり、面接官によって選考に個人差が出ないよう採用における「ものさし」です。採用基準を作ることによって面接官の選考基準を統一し、企業と候補者のミスマッチを防ぎます。また候補者を客観的に且つ公平に評価をすることができるので面接官によって選考結果が変わるという事態を避けることができます。
採用基準を定めるメリット
ここでは、採用基準を定めるメリットを紹介します。
採用基準を定めるメリットは2つあります。
①自社に合った人材を確保できる
明確な採用基準がない場合、面接官の主観や価値観で選考結果を判断してしまいます。採用基準を定めることによって、どのように人材を見極め・評価すれば良いのか明らかになり、「自社に合った人物像」に的を絞って戦略・プランを立てられる上、採用成功率も上がりスピード感を持って選考を進めていくことができます。
②定着率が高まる
会社が求める能力や価値観・雰囲気などを採用基準に取り入れることによって、会社に見合った人材を見極めることができ、早期退職などの入社後のミスマッチを防ぐことができます。また、あらかじめ自社で定着・活躍できる人材を把握しておく必要があります。
採用基準の決め方
採用基準を設定するにあたり、必要な事前準備や重要な4つのステップ・評価項目の作成方法等をご紹介していきますので、是非参考にしてみて下さい。
また採用基準を設定することにより、公平な選考が可能になります。
冒頭部分でも説明した通り、採用基準が明確化されていないと面接官の価値観や主観によって選考結果が左右されてしまう可能性があります。採用基準を明確化することによって、複数の面接官が関わった場合にも同基準で候補者を図ることができるため選考の公平性を保つ事ができ、自信を持って選考を進めていくことができます。
新卒採用編
新卒採用の採用基準を決める際に、何を重視し評価項目を設定すべきかをご紹介します。
まず採用基準を作成する前に以下の4点を確認・決める必要があります。
①社内の各部署へのヒアリング
②コンピテンシーの明確化
③基準の優先順位付け
④ペルソナの決定
上記4点説明していきます。
①社内の各部署へのヒアリング
各部署へのヒアリングは雇用を見極めるのにとても重要な役割を果たします。その際に部署に必要なスキルや資格、価値観などを具体的に聞くことによって評価項目を詳細に設定できる上、現場にも当事者意識を持ってもらえます。
②コンピテンシーの明確化
コンピテンシーとは成果・結果を出す人に共通する思考のことを指します。自社に合ったコンピテンシーモデルを複数つくり共通点を見出しておくことによって同じような思考をもつ候補者の場合、入社後に活躍してくれる可能性が高いと言えます。
③基準の優先順位付け
選考を始めるにあたり自社ではどの評価項目を採用で優先するのか考える必要があります。サービス業などの場合はコミュニケーション力・対人スキルを重視しその次に主体性やスキルなど、企業によって優先順位は異なります。条件をある程度絞り込むことによって、基準の厳格化を防ぎます。
④ペルソナの決定
ペルソナとは、マーケティングのおける架空のユーザー像・人物モデルという意味で、詳細に人物像を設定していきます。ペルソナを作ることによって、具体的なエピソードや候補者が持つ雰囲気、ターゲット像を想像しやすくなり複数の面接官に共通認識を持たせることができます。また、ペルソナを決める際には必要な情報を絞り、思い込みや先入観を反映しないこと、イメージしやすいものを作る必要があります。
採用基準設定までの流れ
採用基準の評価項目を決める前に上記の①社内の各部署へのヒアリング、②コンピテンシーの明確化、③基準の優先順位付け、④ペルソナの決定を確認・検討します。
採用基準を言語化ができた時点で、現場・各部署の採用担当と内容を確認・共有を行いましょう。そうすることによって採用選考の質を高める
ことができ、担当者同士の認識のズレを最小限に抑えることができます。
評価項目の作成
ここでは、採用基準を作る上で重要な、評価項目の設定についてご説明します。
評価項目はできるだけ具体的に作成することによって、面接官同士の選考・認識のブレを少なくすることができます。
今回は2018年度の経団連の調査データ「採用担当者が新卒採用の選考で重視した点」をご紹介します。
参考:一般社団法人 日本経済団体連合会 2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
上位3つは
・コミュニケーション能力
・主体性
・チャレンジ精神
となっております。特にコミュニケーション能力は16年連続で1位で、主体性も10年連続で2位を更新しています。
今回は上記の3点を含めた5項目で作成していきたいと思います。
【評価項目①】コミュニケーション能力
コミュニケーション能力に関して細分化すると以下のようになります。
・傾聴力
・表現力
・協調性、柔軟性
・交渉力、折衝力
「コミュニケーション能力」=傾聴力や表現力と認識しがちですが、細分化して考えてみると柔軟性や折衝力もコミュニケーション能力の1つのです。いくら話が上手であろうと質問に的確に答えるという、会話のキャッチボールができなければコミュニケーション能力が高いとは言えません。
【評価項目②】主体性
主体性に関しては、学生の成功体験から判断する場合があります。主体性がありスピード感を持って行動できる学生は物事を進んで取り組めることができるので、いずれ企業の発展に貢献してくれる可能性が高いです。
【評価項目③】チャレンジ精神
チャレンジ精神では仕事における積極性やリーダーシップの有無を図ることができます。難しいプロジェクトや仕事を率先して取り組んでくれるかなど実際の業務に直結してくる重要な項目です。
【評価項目④】論理的思考
論理的思考ができる人は、さまざまな視点から分析を行い解決策を検討することができます。結果として提案力・分析力などがアップし、チームや企業の生産性の向上に繋がります。
【評価項目⑤】ストレス耐性
ストレス耐性は今後仕事をしていく中でとても重要な項目です。面接の中でストレス耐性を図るには今までで一番大きな挫折は何か、またそれをどう乗り越えたかなど、大きな挫折や失敗した時のエピソードを聞くのが有効的です。どのような対処をし、解決のためにどの程度時間がかかったかなどがポイントになります。
中途採用編
新卒採用と同様で、採用基準の評価項目を決める前に①社内の各部署へのヒアリング、②コンピテンシーの明確化、③基準の優先順位付け、④ペルソナの決定を確認・検討します。
新卒採用と中途採用の大きな違いは、「即戦力」になるかならないかという点にあります。中途採用では知識や経験をもつ「即戦力」となる人材を求めています。そのため経験年数に応じた能力やスキルがあるか、応募した背景などをしっかり見極める必要があります。
中途採用で重視される項目は以下の4点です。
【評価項目①】スキル・経験の有無
中途採用においてスキル・経験の有無は即戦力として会社に貢献できるか見極めるポイントの1つです。候補者が持つ前職でのスキルや能力が会社での業務に役立つかなど確認する必要があります。また前職で「苦労した経験」、「成し遂げたこと」ことなどを質問する際に「個人」での業務だったのか、「チーム」での業務にだったのかを聞くことによって候補者の仕事ぶりなどがわかります。
【評価項目②】仕事に対する熱意・適合性
仕事に対する熱意・適合性を図ることによって、将来どのようなポジションにつきたいのか、積極的な姿勢・成長意欲を持っているのかなどを確認することができます。また候補者の考えに一貫性があるか、明確な志望理由を持っているのかなどを重視して面接を行うことにより、誠実さや熱意・主体性を見極めることができます。
【評価項目③】コミュニケーション能力・協調性
新卒採用の評価項目でもあったようにコミュニケーション能力・協調性は採用活動をしていく上で欠かせない評価項目の1つです。特に転職回数などが多い候補者には協調性や柔軟性が備わっているのか、退職理由等をしっかりと確認する必要があります。
【評価項目④】勤務条件
中途採用者に求めるスキルや経験以外に、勤務時間、勤務地、給与、業種形態などの勤務条件などを決めておく必要があります。勤務条件については求人を始めた際から提示しており、候補者が重要視する項目のひとつです。
採用基準を決める際の注意点
採用基準は自社の状況や競合企業の変化によって変わってくるため、定期的な見直し・更新が必要です。
新卒採用編
新卒採用の採用基準を設ける際に注意点は以下の通りです。
①選考フローと採用基準の確認
書類選考、筆記試験、グループディスカッション、1次~最終面接までのフローの中でどのような採用基準で選考を進めていくか確認します。スキルや能力、協調性などに関する項目を重視する面接の場合、各採用基準を方法別に分類しておくとスムーズに選考を行うことができます。
②採用基準に入れて“良いこと、悪いこと”の認識を持つ
採用基準が詳細であることは問題ありませんが、出生や家庭環境などといった就職差別につながる項目を入れてはいけません。厚生労働省は「公正な採用選考は、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」ということを明記しています。
厚生労働省による採用基準についての詳細はこちら↓のURLを確認してくだい。
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm(厚生労働省 公正な採用選考の基本)
中途採用編
中途採用の採用基準を設ける際の注意点は以下の通りです。
①自社独自の採用基準を作る
自社で活躍してもらう人材を確保するためには一般的な評価項目だけでは適正な判断ができません。+αで「社風」や「人間性」などを盛り込んだ独自性のある採用基準を作りましょう。
②自社の課題と採用基準の確認
自社が抱える課題や状況はその時に応じて変化をします。その変化に対応していくには採用基準を決める際に、自社の課題と評価項目が適応しあっているか確認することが大切です。また、入社後のミスマッチを防ぐためにも、実際に働いている方に採用基準に関して意見を出してもらうなど、現場の声を取り入れていくことが適正な採用基準を設けることに繋がります。
採用基準の決定
適正な採用基準があれば、自社に適した採用活動をスムーズに進めることができます。採用基準のベースとなる評価項目を洗い出し、どんな人材に入社してもらいたいかを会社全体で認識・共有することが重要です。
採用基準を決める際によくある失敗例
新卒採用編
自社の弱みを採用基準に反映しきれていない
自社の業績アップや業務に貢献してもらうには弱みをリカバリーできる人材を採用しなければいけません。そのためには自社を取り巻く課題や状況を踏まえ、複数の面接官や採用・現場の担当者と求める人物像をデータ等で共有し選考フローを含めた、採用基準を見直す必要があります。
中途採用編
求める人物像が曖昧
応募者のビジョンや考え方などが自社の事業内容・社風に合っていなかった場合、入社後のミスマッチの原因になりかねません。面接の際にキャリアプランや志望理由などをしっかりヒアリングするのはもちろんのこと、社風やビジョンを踏まえどういう人が何故必要なのか明確にすることが大切です。
採用基準を作ってもミスマッチが起こる理由
採用基準を作ってもミスマッチが起きる理由は以下の3点です。
①評価項目が曖昧
評価項目が曖昧だと面接官は公平な評価をすることが難しい上、自社に合った人材を確保することができません。評価項目はできるだけ細かく求めてる人材を明確化し、設定しておくことをおすすめします。
②採用担当者と現場面接官で採用基準の認識が異なる
採用担当者と現場面接官とで採用基準について異なる認識を持っていると、合否の判断に大きな差が生まれてしまい現場で求めているはずの人材が不採用になってしまうことがあります。採用担当者、現場面接官が共通認識をもてるように事前に採用基準について話し合うことが大切です。
③採用基準が高い
採用基準が高いと応募者が集まらない上、選考を通過する応募者がかなり限られてしまいます。しかし採用基準が高い・低いは企業目線では分からないことが多いので、必ずその年の転職・採用市場調査をしておきましょう。市場調査をすることによって自社の置かれている状況を把握することができ、適切な採用基準を設定することが可能になります。
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新型コロナウイルスの影響を受け、これまで対面が当たり前だった面接のオンライン化が加速しています。これに伴い、対面の時から使用してきた「面接評価シート」も、オンライン面接のケースも想定した上で内容を見直していく必要が出てきました。
この機会に是非、自社の面接採用基準を見直してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
採用基準とは自社と合う人材を採用する上で大切な面接時の評価指標です。採用基準を設定する際は求める人材の明確化と、それを採用・現場担当者同士でもれなく共有することが大切です。近年自社に合った人材を確保するのは難しくなっています。採用基準をしっかり見直して、良い人材を確保しましょう。