第3回 エンプロイアビリティの種類

2種類のエンプロイアビリティ

本記事では、雇用されるための能力(可能性)を示すエンプロイアビリティの種類について、2つの代表的な分類からみていきます。

 

1,外的エンプロイアビリティと内的エンプロイアビリティ

欧米でエンプロイアビリティという考え方が生まれた当初は、失業している人が雇用される能力を意味していました。その後、エンプロイアビリティは組織に雇用されている人に応用されるようになり、組織との関係で以下の2つの種類が論じられるようになりました。

第1が、他社に転職できる能力(可能性)で、外的エンプロイアビリティといいます。これは、転職市場で評価の高い、他の企業でも使える能力を意味します。エンプロイアビリティという言葉を聞いたことがある人がまず思い浮かべるイメージではないでしょうか。

第2が、現在の組織で評価されて、雇用され続ける能力(可能性)で、内的エンプロイアビリティといいます。企業の業績が悪化して社員をリストラせざるを得なくなった場合でも、最後まで辞めさせられないような(社員のもつ)能力のことです。これを高めるには、商品知識等その企業でしか使えない能力(企業特殊的能力)を蓄積することが求められてきました。

内的エンプロイアビリティの重要性

内的エンプロイアビリティに注目したのは実はわが国なのです。日本経営者団体連盟(現日本経済団体連合会)は、「日本型エンプロイアビリティ」を唱え、欧米で主に取り上げられてきた外的エンプロイアビリティだけでなく、内的エンプロイアビリティを重視すべきだとしました。この背景には、わが国では、転職する人々が増えてきたとはいえ、欧米ほど転職市場が育っておらず、他社でも使える高い専門的能力を評価され転職する人が欧米ほど多くなかったという事情があります。さらに、終身雇用を支持する人々の比率が高く、リストラされなければ現在の組織で勤め続けたいという人々が多かったからです。

 

日本経営者団体連盟のNED(ネッド)モデルは、内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティの関係を示しています。

(出所)日本経営者団体連盟(1999)より引用

 

これによると、エンプロイアビリティは、A(労働移動を可能にする能力)とB(当該企業内で発揮され、継続的に雇用されることを可能にする能力)の和と考えられます。Aが外的エンプロイアビリティ、Bが内的エンプロイアビリティです。加えて、Cは当該企業の内と外の両方で発揮される能力、(A-C)は当該企業内では発揮することができない能力、(B-C)は当該企業内だけで発揮することができる能力となります。

 

転職が一般的でなく、グローバル化やIT化がそれほど進行していなかった頃には、内的エンプロイアビリティであるBの能力を社員に身につけてもらうことで十分だったかもしれません。しかし、転職が一般化した現代では、外的エンプロイアビリティであるAの能力を高めるための研修や自己啓発の支援を行う必要性が高いのです。それを怠ると、人材獲得競争のなかでキャリア開発意欲の高い高業績人材の引き留め(リテンション)は難しいといえます。このように、現代では外的エンプロイアビリティが重視されてきましたが、内的エンプロイアビリティが不要とは言い切れません。両者の間にはプラスの関係、つまり他の組織でもやっていけるだけの能力を持っている社員は、現在の組織でも継続的に雇用されやすいという関係が成り立つのです。これはAとBには重なる部分(C)があることを意味しています。今後、高業績人材を含む働く人に求められる企業とはCの部分を広げていくこと、つまり、当該企業で身につき発揮される能力が、限りなく他社でも使える、つまり移転可能な能力であることが求められるといえます。

2,絶対的エンプロイアビリティと相対的エンプロイアビリティ

エンプロイアビリティには、比較的安定し、どのような状況でも特定の仕事を獲得するのに(絶対的に)必要とされる能力を示す絶対的エンプロイアビリティと、労働市場(転職市場)での需要と供給によって変動し、その仕事を求める人々のなかでの能力の相対的な位置(順位)を問題とする相対的エンプロイアビリティとがあります。医師を例に前者を説明します。医師として雇用されるには、他学部に比べ難易度が高い医学部に入学し、高度な専門知識を習得するとともに、医学部を卒業し国家試験に合格することが必須です。その結果、どの国でも、時代を越えて非常に高い確率で医師として組織に雇用されるのです。つまり、医師資格をもっていることは絶対的エンプロイアビリティに近いといえます。

しかし、現代ではこうした例は少なく、多くの人々が自身の相対的なエンプロイアビリティを考えなければならないでしょう。IT化、グローバル化等の進展により働く人のスキルが古くなる速度が速まってきたため、その人が他社で雇用可能かどうかは個人や労働市場の状況で変動するようになってきたからです。あるエンジニアが大学院時代画期的な技術を学んだとしても、その後長きにわたり、その技術が評価されて転職できるとは限らないのです。すなわち、エンプロイアビリティを高めるには、現在、自分の職業、専門分野や仕事のニーズがどの程度あるのか、近い将来、どのような職業や仕事のニーズが高まるかなどの労働市場についての知識と、雇用されるためにはどのような経験、スキルや資格を身につける必要があるかについての知識が必要となります。そして、不足するものがあるとすれば、自分自身で、または組織の制度等を利用して能力開発を行う必要があります。その結果、他の人々との競争に勝ってエンプロイアビリティが高まるのです。

 

引用文献

日本経営者団体連盟 1999 エンプロイヤビリティの確立をめざして-「従業員自律・企業支援型」の人材育成を- 日本経営者団体連盟教育研修部.

*今回の連載について、より詳しく知りたい方は以下の文献をお読み下さい。

山本寛(2014)『働く人のためのエンプロイアビリティ』創成社

 

山本 寛

  • 青山学院大学経営学部・大学院経営学研究科 教授
  • 「連鎖退職」「なぜ、御社は若手が辞めるのか」「中だるみ社員」の罠」著者
  • 研究室ホームページ:http://yamamoto-lab.jp/

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